認知症になると相続対策ができない!早めの対策を

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家族信託

厚生労働省は2012年時点で全国に、認知症患者が462万人いると推計しており、その数は今後ますます増えていくと予想されています。認知症を患うと、本人の生活が困難になり、家族と共に様々な問題・課題を抱えることになります。

そして、資産をお持ちの家庭で一番困るのが「相続対策ができなくなる」ことです。どうして認知症患者は相続対策ができないのでしょうか?また、どのように対策を取ったら良いのでしょうか?

認知症になると相続対策ができなくなる!

認知症を患うと相続対策を進める上で様々な弊害を受けることになります。

認知症患者の法律行為は無効になる

民法上、認知症を患った人は「意思能力のない者」として扱われます。そして意思能力がない人の契約行為などは「無効」、もしくは「取り消せる」ことになっています。

こうした意思能力がない、または低下していることは医師の診察によって明らかになりますが、もし医師から「認知症である」と診断を受けると、法律行為が無効とされるのです。

認知症患者の相続対策も無効になる

法律行為には、もちろん相続対策も含まれるため、認知症が患った人が行う相続対策等も無効として扱われることになるでしょう。
具体的には次のような行為ができなくなりますが、相続対策にとってはどれも重要な内容であり、事実上、相続対策ができないと言えます。

  • 不動産の建設・売却・賃貸契約
  • 預金口座の解約、引出し
  • 生命保険加入
  • 子供、孫などへの生前贈与
  • 遺言書の作成
  • 養子縁組
  • 遺産分割協議への参加
  • 株主の場合、議決権の行使

もちろん、認知症になる前に相続対策を終えてしまえば問題はありません。しかし、実際は被相続人の多くが「自分は認知症と無縁である」と考えています。その結果、いざ相続対策をしようと言うときには手遅れになっているケースもあります。
特に、被相続人が会社のオーナー株主の場合には、その自社株を後継者に集中させることができず分散されてしまい、会社の存続にも関わってきます

法定後見制度では相続対策ができない

本人の意思能力が衰えていて資産管理や契約行為ができないときには、裁判所によって選出された成年後見人が、その人に代わって、資産管理や契約行為をします。これが「法定後見制度」です。

ただし、成年後見人の主たる役割は、本人の利益のために行う資産管理と保全です。資産を売却するにしても、預金を引き出すにしても、すべては本人のために行わなければなりません。

一方で、相続対策というのは本人(被相続人)の利益ではなく相続人の利益のために行うものです。
遺産分割対策は、亡くなった人が困るのではなく残された家族の間でトラブルにならないように対策をします。
また、節税対策については、相続税も贈与税も払うのは被相続人ではなく相続人のほうですから、資産を受け継ぐ相続人が多額の税金を負担しなくてもすむように行います。

本人が生きている間に子供や孫に生前贈与することは、本人の資産額を減らし不利益を与えることですから許可されません

つまり、法定後見制度を使っても相続対策はできません。

【参考】成年後見人の仕事内容のすべて:心構えから就任・終了まで

認知症になったら、もう手遅れ

認知症の父親には多額の資産があり、このままだととんでもない高額な相続税が発生することが目に見えている、なんとか対策する方法はないのか?と悩んでおられる方もいるでしょう。

大変お気の毒ではありますが、認知症になってしまったら、もう手遅れなのです。打てる手段がありません。
なぜなら相続財産はすべて本人の所有財産なのですから、たとえ家族であっても本人の承諾なしに勝手に手をつけることは許されないのです。認知症になると、その本人が意思を表現できないのですから、もはやどうしようもありません。

親が認知症になっていることを隠して公正証書遺言を作らせるといったこともご遠慮ください。もしトラブルになって裁判になれば遺言の無効の判決が出るでしょう。たとえ公正証書遺言であっても、本人の意思で作成したことが明らかでなければ無効となります

唯一できることは、現在の財産を把握し、相続人となるであろう人の間で共有して心構えをしておくくらいでしょうか。また発生する相続税の金額を把握し、それに備えて現金をコツコツとためて用意しておくことです(現金で払えない場合は、延納・物納という方法もあります)。

認知症になる前にしておくべき手続き

認知症になる可能性がある方は、認知症になる以前に法的手続きを取っておくことで、万が一の際にも相続対策ができるようになります。その方法を2つ紹介します。

任意後見制度による対策方法

後見制度には、先に紹介した「法定後見制度」のほかに、「任意後見制度」があります。任意後見制度は法定後見制度と異なり、後見人の意思で被後見人を選出し、その被後見人に財産の処分を託すことができます。したがって、任意後見制度であれば相続対策ができるのです。

任意後見制度を利用するには、後見人と被後見人候補との間で「任意後見契約」を締結する必要があります。そして、後見人に認知症の症状が見られた際に、被後見人が資産管理・運用・処分をすることになります。

なお、任意後見制度を活用するには、後見人の意思能力があるうちに限られます。認知症と診断されてからでは、法定後見制度しか使えません。したがって、早い段階から任意後見制度を利用して、相続対策を進めるようにする必要があります。

家族信託(民事信託)による対策方法

信託とは、委託者と受託者、受益者の三者で成り立つ契約です。この契約を簡単に説明すると下記の通りです。

(1)委託者は受託者に財産を委託する
(2)受託者は受託内容に従い財産を運用・処分する
(3)運用・処分によって得た財産や利益を受益者が受け取る

家族信託

この信託の中で委託者と受益者が家族である場合、もしくは三者とも家族である場合を「家族信託」と言います。そして家族信託でも相続対策ができます。たとえば、委託者:父親、受託者:長男、受益者:長男を含む家族として、毎年少しずつ、父親の財産を家族に贈与することができます。

家族信託を利用する場合には、その委託内容に財産管理・運用・処分方法を明らかにしておきます。そして、効力発揮後は契約内容に従って、受託者が相続対策を実行するだけです。

なお、家族信託も「認知症」と診断される前に契約をしなければ無効になってしまいます。そのため、早いうちから対策を取っておくことが望まれます。

認知症と相続対策のまとめ

認知症になってからでは相続対策がほとんど全くできません。そこであらかじめ「任意後見制度」か「家族信託」によって対策を講じておくことが望まれます。これらの手続きで不明な点があれば相続弁護士などの専門家に相談をして、一緒に対策を進めると良いでしょう。

【オススメ参考記事】
任意後見契約の概要と契約の流れ、方法
認知症の人に遺言能力はあるのか?家族がとるべき対策

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