不動産があると遺産分割がもめる理由と不動産評価方法

★ お気に入りに追加

遺産相続をする場合、有効な遺言書がなければ相続人同士が遺産分割協議を行って遺産の分割法方を決める必要があります。このとき、遺産の中に不動産が含まれていると、遺産分割協議がもめてしまうことが非常に多いです。どうして遺産に不動産があると遺産分割協議がうまくいかないのでしょうか?

また、不動産を対象にして相続をする場合、不動産の価値を評価する必要がありますが、不動産の評価方法にはいくつかの種類があるので、それぞれの考え方と、どのような場面で利用するのかについて知っておく必要があります。そこで、不動産があると遺産分割協議がもめる理由と、不動産の評価方法について解説します。

1.不動産があると遺産分割がもめる理由

人が亡くなって遺産が残されていたら、相続人同士が集まって遺産分割協議をする必要があります。この場合、遺産分割方法についてスムーズに決めることができず、トラブルになってしまうことがよくあります。

遺産分割協議でもめるのは、高額な遺産があるケースだと思われているかも知れませんが、実際に遺産分割協議でもめ事が起こって調停になっている件数の多くは、遺産の金額が5000万円以下の一般家庭です。

遺産分割協議でもめるのは、遺産の総額よりも内容によるところが大きいです。具体的には、遺産に不動産が含まれていると、遺産分割協議でもめる可能性が高くなります。
以下で、その理由をご説明します。

1-1.誰が取得するかでもめる

遺産の中に不動産が含まれている場合、その不動産を誰が相続するかでもめることが多いです。遺産内容が現金や預貯金なら、単純に1円単位で分割することができるので、相続人の頭数で割り算することなども簡単ですが、不動産はそうはいきません。

不動産は現金のように分割できないので、基本的には1人の相続人が単独で取得することになりますし、そうだとすると、誰が取得するのかという問題が起こります。

複数の相続人が1つの不動産の取得を望んだ場合にも争いになりますし、1人が取得を望むケースでも、不動産は通常高額なので、他の相続人との間で相続分の不均衡が起こってしまい、やはり争いになることが多いです。

かといって、共有状態にすると、後々不動産の売却や賃貸などの処分が面倒になるので、避けた方が良いのです。このようなことから、不動産があると、まずは「誰が取得するか」ということでもめてしまいます。

1-2.代償金の支払ができなくてもめる

不動産が遺産に含まれていると、その不動産を取得した人が他の相続人に対して代償金を支払う必要が発生することが原因で、もめてしまうことがあります。

不動産の相続をする場合、不動産は通常高額なので、1人が相続するとその人の取り分が大きくなりすぎて、他の相続人との間で不均衡が起こってしまうことが多いです。

たとえば、3000万円の不動産と600万円の預貯金が遺産の内容としてあるケースを考えてみましょう。
このとき、長男と次男、三男の相続人がいるとします。

この場合、もともとの法定相続分は、長男も次男も三男もそれぞれ1200万円ずつ(3分の1)です。しかし、長男が3000万円の不動産を相続して、次男と三男が300万円ずつ預貯金を相続するとなると、長男の取り分が他の2人よりも2700万円も高くなって、かなり不公平になっていることがわかります。

この不公平を解消するため、不動産を相続する人は、代償金を他の相続人に支払う必要があります。具体的には、先の例の場合、長男は他の相続人に対し、代償金として900万円{(3000万円-1200万円)÷2人分}ずつ支払うことになります。このようにすると、長男の取り分は3000万円-1800万円=1200万円、次男と三男の取り分はそれぞれ300万円+900万円=1200万円となって、公平になります。

ところが、長男がこの代償金の支払をしない(できない)ことで問題が発生するケースが多いです。そもそも代償金の金額をいくらにするかというところでもめてしまうことも多いですし、長男に資力が足りずに代償金の支払いが難しい場合にはそもそも長男が不動産を取得することができなくなってしまうので、更に遺産相続がもめます。

たとえば、その不動産が実家であり、長男がもともと親と同居していてその不動産に居住している場合などには、長男が相続出来ないと、長男は住むところがなくなってしまうことにもなりかねないので、大きな問題になります。
このように、不動産の遺産相続があると、代償金の支払いが発生することによってトラブルになることが多いです。

1-3.不動産の評価方法でもめる

遺産相続の際に不動産があると、その不動産の評価方法でもめることが非常に多いです。このことは、不動産の評価方法が現金のように一律でないことによります。

不動産の評価方法には実勢価格や相続税路線価、固定資産税路線価などの方式があるので、それぞれによって全く異なる金額になります。実勢価格についても、査定を依頼する業者によって数百万円以上の差額が発生してくることもあります。

不動産を取得する人は、なるべく不動産の評価を低くしたいと考えますし、不動産を取得しない人は、なるべく不動産の評価額を高くした方が代償金の金額が上がるので、高額の評価をしようとします。
すると、お互いの意見がかみ合わず、トラブルになります。

たとえば、遺産の中に1つの不動産と600万円分の預貯金があり、先ほどのように3人の兄弟が相続するとしましょう。このとき、不動産の評価額が3000万円なら、それぞれの相続分は1200万円です。長男が次男や三男に支払う代償金の金額は900万円ずつになります。
これに対して不動産の評価額が1800万円なら、兄弟それぞれの相続分は800万円です。そうなると、長男が次男や三男に支払う代償金の金額は、500万円{(1800万円-800万円)÷2人分}ずつになります。

大変このように、同じ不動産を相続した場合でも、不動産の評価方法によって、それぞれの遺産の具体的な取り分が全く異なってくるのです。このようなことから、不動産の評価方法はそれぞれの相続人にとって大きな問題になるので、相続人がそれぞれ自分に都合の良い評価方法を主張してきて、不動産の評価方法はトラブルの原因になります。

以上のように、遺産の中に不動産が含まれていると、遺産相続がトラブルになる可能性が極めて高くなります。

2.不動産の評価方法

次に、不動産の評価方法を見ておきましょう。不動産は、現金や預貯金のように一律では計算できません。評価方法としては、相続税路線価固定資産税路線価固定資産税評価額公示地価実勢価格の4種類がありますので、それぞれについて順番にご説明します。

2-1.相続税路線価

不動産の評価方法として、まずは相続税路線価があります。これは、相続税の支払いの際の基準として用いられている不動産の評価方法です。

路線価とは、市街地の道路に面した宅地の1平方メートルあたりの価格のことです。相続税路線価で計算できるのは、土地の評価額のみであり、建物の評価はできません。
相続税路線価は毎年改定されるので、これをもって評価をする場合には、相続が起こった年の相続税路線価を利用する必要があります。

また相続税路線価には、補正があります。細長かったり奥行きが少なすぎたりするために使い勝手が悪い土地の場合などには、奥行価格補正が行われて土地の評価額が下がります。

逆に、2つ以上の道路に面している土地などは、使い勝手が良くなるので側方路線価加算が行われて、土地の評価額が上がります。
相続税路線価の評価額は実際に土地の取引をした場合の実勢価格や公示地価より低くなることが普通であり、具体的には実勢価格や公示地価の8割程度の価格になります。

【相続税理士サイト】土地の評価方法:路線価方式と倍率方式

2-2.固定資産税路線価・固定資産税評価額

不動産の評価方法には、固定資産税路線価や固定資産税評価額があります。

固定資産税路線価とは不動産の固定資産税を課税する際に基準となる路線価のことです。相続税の課税の場合には相続税路線価が利用されるので、相続税の課税と固定資産税の課税の場合とでは、不動産の評価方法が異なります。

固定資産税路線価は、市町村が発表しており、3年ごとに改定されるので、相続が起こった年の該当年度のものを利用する必要があります。
また、3年の間に土地価格の下落や上昇が起こることがあるので、各年度において時点補正率による補正が行われます。
固定資産税路線価は、路線価の一種なので土地の評価にしか利用する事ができません。

これに対し、固定資産税評価額は不動産に固定資産税を課税する場合の基準になる評価額そのものです。
固定資産税評価額は、固定資産税路線価に従って計算されていますので、土地の場合には固定資産税路線価によって計算したものと同じ数字になります。また、固定資産税評価額は、建物にも設定されています。

固定資産税評価額を知りたい場合には、その不動産が所在する市町村役場で固定資産税評価額証明書を取得することによって確認することができます。
固定資産税路線価や固定資産税評価額の数字は、公示地価や実勢価格の7割程度になることが多いです。

2-3.公示地価

不動産の評価方法には、公示地価もあります。公示地価とは全国の標準地について定められる地価であり、国が適正であると認めた土地の評価額のことです。国土交通省が定めており、毎年改定されます。公示地価の決定の際には、不動産鑑定士が2人関与して、鑑定結果などをもとに評価しています。

公示地価は、どこにでも設定されているわけではなく「標準地」にしか認められないので、これをそのまま不動産評価方法として利用できることは少なく、参考の数値にするのが普通です。また、土地についてしか設定がないので、建物の評価方法としては利用できません。

2-4.実勢価格

不動産評価方法として、実勢価格を利用する事も多いです。実勢価格とは実際に不動産が市場で取引される場合の評価額のことです。ただ、実際にその不動産が取引される価格というのは、一律に決めることが難しいです。その不動産をどうしてもほしい人がいれば高額で取引されますし、良い不動産とされるものでも、ほしい人がなかなか見つからなかったり売り急いだりする場合には値段が下がることもあります。

不動産の査定を行う業者によっても、大きく査定金額が変わり、同じ不動産でも数百万円以上もの金額の差が発生することもあります。
ただ、概して言うと、不動産は実勢価格がもっとも高額になることが多いです。

2-5.不動産の評価方法一覧

評価方法 土地 建物 主な利用目的 備考
相続税路線価 × 相続税の計算 実勢価格の8割程度
固定資産税路線価 (○) (×) 固定資産税の計算 実勢価格の7割程度
固定資産税評価額
公示地価 × 参考値
実勢価格 遺産分割・売買など 不動産業者により差あり

相続税路線価は実勢価格の8割程度、固定資産税評価額(固定資産税路線価)は実勢価格の7割程度になります。
このように、不動産の評価方法は極めて多彩であり、ケースバイケースに応じて使い分ける必要があります。
遺産の中に不動産が含まれている場合には、その不動産をどの基準で評価すべきかが大きな問題になります。

3.遺産分割協議における不動産評価方法

3-1.実勢価格が基準

不動産には上記のようにたくさんの評価方法がありますが、遺産分割協議の際には、どのような評価方法で不動産を評価することになるのでしょうか?

この場合、通常は実勢価格を基準にします。不動産を実際に処分する場合には実勢価格によることになるので、実勢価格で評価することが現実に即しているからです。

ただし、遺産分割協議に参加するもの全員が別の評価方法(たとえば相続税路線価など)によることに合意している場合には、その評価方法を使うことに何の問題もありません。
遺産分割協議では、基本的に相続人らの自由な意思によって各種の決定をすることができます。

3-2.不動産業者に査定を依頼

不動産の実勢価格を調べたい場合、もっとも簡単な方法は、不動産屋に不動産の簡易査定をしてもらう方法です。近くの不動産屋でもインターネット上の一括見積もりでもかまわないので、不動産の簡易査定を依頼したら、数日で査定書を発行してくれます。

これを見たら、不動産のだいたいの相場がわかります。査定書には、売り出し価格と評価額の2つの価格が記載されていることがありますが、売り出し価格は不動産を売り出す場合の当初につける金額であり、実際の評価額より高くなっていることが普通なので、評価額としては最終の査定価格を使います。

ただし、依頼する不動産屋によって、査定額に差が発生してしまうことが問題になります。
不動産を相続する人はなるべく低い査定書を出してきますし、不動産を相続しない人はなるべく高額な査定書を出してきます。そこで、このような場合には間をとって計算するなどしてバランスをとることが多いです。
遺産分割協議をする場合には参考にしてください。

4.相続税申告における不動産評価方法

不動産を相続したら、相続税の申告と納税をする必要があります。相続税の計算の際に利用するのは、相続税路線価と固定資産税評価額です。土地の場合には相続税路線価で評価しますし、建物の場合には固定資産税評価額を利用します。
よって、不動産を相続すると、相続税の計算は実勢価格を基準として場合よりも安くなるので、現金や預貯金の形で相続するよりも節税になると言われます。

土地の場合には相続税路線価の設定がない場所があります。その場合には、土地の固定資産税評価額を前提として、それに評価倍率という一定の倍率をかけ算して相続税課税の評価額を計算します。相続税路線価も評価倍率も、国税庁が発表しているので、調べるとわかります。

【外部サイト】国税庁:全国の路線価図・評価倍率表

5.遺産分割でもめる前に弁護士に相談を!

以上のように、遺産の中に不動産が含まれていると、不動産の相続方法や評価方法について、相続人同士で争いが起こってしまうことが多いです。
そもそも誰が取得するかという問題もありますし、代償金支払いの必要が発生することも多く、評価方法自体が多彩なので、どのように評価するのかで争いが起こってしまうことも多いです。

このように、相続がいったんもめてしまうと、自分たちだけで解決することはかなり難しくなります。放っておくと、相続が争続になってしまい、身内どうしで激しい骨肉の争いが繰り広げられることにもなってしまいます。

そのような事態を避けるためには、遺産分割協議を弁護士に依頼することが重要です。
弁護士であれば、どのような事案でどのように不動産を相続すべきか、相続した場合の代償金の金額や不動産の適切な評価方法などについてアドバイスをくれるので、もめ事が起こりにくくなりますし、もめ事が起こっていても解決しやすくなります。

不動産を相続した場合、もめ事が起こる前にまずは弁護士に相談してみましょう。早期に対処することによって、問題が大きくなる前に解決できるのでスムーズに手続きができます。

まとめ

不動産があると遺産分割がもめてしまうこととその原因、不動産の評価方法の種類と内容、遺産相続や相続税支払いの際の不動産評価方法について解説しました。

遺産の中に不動産があると、どうしても遺産分割が複雑になって、遺産分割協議がもめてしまいがちです。そもそも不動産を誰が取得するかでもめますし、不動産の評価方法自体にたくさんの種類があるので、相続人同士で合意出来なくなることも多いです。不動産を取得した人が代償金を支払えない(支払いたくない)のでもめ事になるケースもあります。

このような問題を避け、早期に解決するには相続問題に強い弁護士に相談することが重要です。不動産を相続したら、もめ事が起こる前に、早めに弁護士に相談しましょう。

相続に強い弁護士が問題を解決します

相続に関し、下記のようなお悩みを抱えている方は、相続に強い弁護士にご相談ください。

  1. 遺産の分割方法で揉めている
  2. 遺言の内容や、遺産分割協議の結果に納得がいかない
  3. 不動産をどう分けるか、折り合いがつかない
  4. 遺留分を侵害されている
  5. 相続関連の色々な手続きが上手くいかず、困っている

相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、弁護士があなたの味方になります。 まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

デフォルトpr下ボタン

この記事が役に立ったらシェアしてください!

あなたへおすすめの記事