相続放棄照会書と回答書の書き方の具体例
たとえば、遺産分割が始まって、被相続人の遺産の中に借金があることが判明したとき。 相続人が借金を引き継がないために、…[続きを読む]
遺産相続で、被相続人の相続財産に借金などのマイナスの遺産が含まれていた場合、相続放棄をするのが効果的です。
そんな相続放棄ですが、ご自身で行うか、あるいは弁護士や司法書士に代行を依頼したりと、いくつか選択肢があり、迷われる方は多いのではないでしょうか。
結論からいえば、相続放棄をするなら弁護士に相談するのがおすすめです。
本記事では、自分で行った場合や司法書士に依頼した場合とも比較しながら、相続放棄を弁護士に相談するメリットと、その手続きや費用について解説します。
相続放棄についてお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
はじめに、相続放棄とは何か、どんな手続きが必要なのか、簡単にご説明します。
相続放棄とは、遺産を一切相続せずに、すべて放棄してしまうことです。
一部の財産のみの放棄(借金は放棄して不動産は相続するなど)はできません。
相続放棄は、被相続人の相続財産の中にあった莫大な借金の返済を免れたい場合や、そもそも相続に関心がなく相続人から外れたい場合などに行われることが多いです。
では、相続放棄はどのような流れで行われるのでしょうか。
相続放棄では、家庭裁判所に対して「相続放棄の申述」という手続きが必要です。
手順を簡単にまとめると、5つのステップに分かれます。
審理の末、相続放棄の申述が無事に受理されたら、自宅にその旨の通知書が送られてきますので、これで相続放棄が完了します。
相続放棄の申述は自分でもできますが、弁護士や司法書士が専門的に取り扱っているので、こうした専門家に相談・依頼して進めるほうがベターです。
本記事では、中でも特に弁護士に相談することをおすすめしますが、まずはなぜ相続放棄を自力ではなく専門家に依頼して行ったほうがいいかご説明します。
相続放棄を専門家に依頼するべき理由は、たとえば以下のようなものがあります。
相続放棄の申述書や相続放棄照会書・回答書等は、正確に作成することが求められます。
万が一不用意なことを書いたり不適切な記載をしたりすると、家庭裁判所に相続放棄の申述を認めてもらえない可能性があるためです。
相続放棄照会書・回答書の書き方の具体例については以下の記事をお読みください。
知識が曖昧なまま自力で相続放棄をすると、「これで本当に大丈夫だろうか」と不安を抱えたまま手続きをすることになります。
相続放棄をしたい場合は「大きな借金がある」「不要な土地があり、相続してしまうと無視できない出費が出来てしまう」など、大きな不利益が背景にあるケースがほとんどですので、相続人が自己判断で行うのはリスクが高い行為です。
他方、専門家に任せれば、相続放棄が確実に認められるように着実に手続きを進めてくれるので、安心です。
相続放棄の申述をする場合、先ほどご紹介したように、管轄の家庭裁判所を調べて相続放棄申述書を作成し、次に必要書類を集めて申述書の提出を行い、その後相続放棄回答書に必要事項を記入して返送する、という一連の作業が必要です。
このような書類の作成や収集、提出などの手続きは非常に面倒です。
特に忙しい日々を送られている方にとっては、大きな負担になるでしょう。
専門家であれば、面倒な作業もすべて代行してくれるので、依頼者の負担がとても軽くなります。
相続放棄は、「被相続人が亡くなったことと、自分が相続人であること」を知ってから3ヶ月以内にしなければなりません(民法915条1項)。
しかし、この熟慮期間というタイムリミットは意外に短く、準備や調査が間に合わなかった、というケースは珍しくありません。
そんなとき、万が一3ヶ月を経過してしまった相続放棄についても認めてもらいやすくなるよう対応できるのが専門家です。
実は、3ヶ月を過ぎても、やむを得ない事情があれば相続放棄が認められる場合があります(最高裁昭和59年4月27日判決)。
もちろん、自分での申請で認められないわけではありませんが、専門家の多くは「事情説明書」「上申書」と呼ばれる書類を作成することで、相続人側の「やむを得ない事情」を家庭裁判所に説明してくれます。
これにより、熟慮期間を過ぎた相続放棄も認めてもらえる可能性が高くなります。
熟慮期間を過ぎた相続放棄がすべての事案で認められるわけではありませんが、自分では対応の難しいことまでしっかりフォローしてくれるので、専門家に依頼すると不安が解消されるでしょう。
このように、相続放棄の手続きに関しては、ご自身でやるよりも、専門家に相談・依頼するほうがおすすめである理由がお分かりいただけたでしょうか。
続いて、弁護士と司法書士を比較していきます。
相続放棄の申述を依頼できる専門家として、弁護士と司法書士が考えられますが、どちらが相談窓口としてふさわしいのでしょうか。
本記事では、以下の事情から、弁護士に相談することを推奨します。
司法書士は書類作成を代理する権限のみしか持たないのに対し、弁護士は、訴訟まで代理する権限まで含む「完全な代理権」を持っており、行える活動範囲がとても広いのです。
相続放棄を弁護士と司法書士に依頼した場合、具体的にそれぞれ以下の流れになります。
司法書士は書類作成代行はしてくれますが、書類にはすべて依頼者本人の署名押印が必要で、申述手続きは本人申立て扱いになります。
また、相続放棄照会書や回答書の送付先も依頼者(申述人)の自宅になりますし、これらの書類についても作成名義人は依頼者本人になります。
前述のように弁護士には完全な代理権があるので、弁護士名で申述をしてくれて、手続きも弁護士の申立て扱いになります。
すると、相続放棄照会書や回答書などの書類は弁護士事務所に送付されますから、依頼者が対応する必要はありません。
このように、司法書士だと、代行を依頼してもある程度は自分がしなければならないのですが、弁護士は大きな権限を持ってどんどん手続きを進めていってくれます。
専門家に依頼することでご自身の労力を省くためには、弁護士に相談し、基本的には一任してしまうことがおすすめです。
また、弁護士に依頼する場合、高額な費用がかかるのではないかと不安になる方も多いかと思います。
料金については、以前は弁護士のほうが少し高めの相場でしたが、実は、最近ではあまり差がなくなってきています。
トータルでみた費用の相場観としては、弁護士も司法書士も、平均的には「5万円前後」、低額な事務所の場合は「2~3万円」といったところでしょう。
もっとも、費用設定の仕方は事務所によって違いがあります。
完全に書類の代行だけを低額で行い、戸籍の収集等を別料金で行うところもあれば、相続放棄をする人(依頼人)の数に応じて料金が変わるところ、すべてトータルで一括でサポートするところもあり、料金の決め方は様々です。
「弁護士だから」「司法書士だから」といって料金が大きく変わるわけではないので、依頼の費用はその事務所が対応する内容と見比べながら考えたほうがいいでしょう。
なお、当サイトでご紹介している全国の法律事務所には、「初回相談無料」「初回30分は相談無料」など、法律相談に対して特典を設けている事務所も数多くあります。
まずはご相談だけでもされてみてはいかがでしょうか。
相続放棄について悩んでいる段階でも、既に相続放棄を決めているとしても、相続には様々な問題がつきまといます。
他の相続人との関係もありますし、本当に相続財産がこれで全てなのかといった疑問もあるでしょう。
こうした相続や相続放棄に関する様々な問題を相談するには弁護士がおすすめです。
相談する中で他の選択肢が見えてきたり、思わぬリスクに気づくことも少なくありません。
最後に、弁護士と司法書士に相続放棄を依頼した場合の違いについて比較し、表にまとめておきます。
弁護士 | 司法書士 | |
---|---|---|
代理できる範囲 | 完全な代理権 | 書類作成の代理権のみ |
申述書の作成 | 弁護士だけで作成可能 | 申述人本人の署名押印が必要 |
申述手続き | 弁護士申立て扱い | 申述人本人申立て扱い |
書類の受け取り | 弁護士 | 申述人本人 |
回答書の作成 | 弁護士だけで作成可能 | 申述人本人の署名押印が必要 |
報酬(費用) | (平均)5万円程度 (低額)2~3万円から |
本記事では、相続放棄の申述手続きを弁護士に依頼すべき理由について解説してきました。
相続放棄は自力で行うこともできますが、手続きを確実に、手間なく進めるためには、専門家、特に弁護士に依頼することがおすすめです。
相続放棄をしたい方は、ぜひ一度、お近くの相続放棄に強い弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。